医薬品開発のための薬事と規制|医薬品を取り巻く薬事規制を理解しよう②

医薬品の開発における薬事規制を知るうえで、医薬品医療機器法が重要であることがわかりました。
承認審査についてもう少し詳しく知りたいのだけど、どのような制度があるのだろう…?

今回は、前回の記事の続きです。薬機法を読み解くことで、薬事規制における承認審査について解説します。

再審査について

再審査制度

一般に、新薬は承認時までの臨床試験等から得られる知見に限度があり、承認後、思いがけない副作用が発生したり、有効性について問題が生じたりする可能性があります。

このため、承認後も引き続き新薬の使用成績調査等の調査を行うことで、安全性等の再確認を行う必要があります。この再確認を行うまでの期間が再審査期間であり、その期間は4年~10年となっています。

再審査とは、すでに承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品として厚生労働省がその承認の際に指示したもの(=新医薬品に対して課される制度です。

つまり、再審査は新薬に課されるものであり、ジェネリック医薬品には課されません。

逆に、再審査を与えられる医薬品が新薬とも言えます。

再審査期間

再審査の期間は、医薬品の種類によって異なります。

新有効成分含有医薬品・希少疾病用医薬品

6年を超えて10年を超えない範囲内の期間です。

実際には、それぞれの再審査期間は次のようになります。

  • 新有効成分含有医薬品の再審査期間:8年
  • 希少疾病用医薬品の再審査期間:10年または8年

すでに承認を与えられている医薬品と効能又は効果のみが明らかに異なる医薬品(希少疾病用医薬品を除く)

長いですが、例えば既承認薬に効能追加があった場合がこれに該当します。新用量医薬品の一部もこれに該当します。

この場合の再審査期間は6年未満ですが、通常は4年です。

上記2つ以外の医薬品

例えば既に経口の医薬品が承認されているが、新投与経路による承認を受けた医薬品がこれに該当します。新医療配合剤もこれに該当します。

この場合の再審査期間は6年です。

再審査期間の延長

再審査期間の延長については、薬機法の第14条の4で規定されています。

厚生労働大臣は、新医薬品の再審査を適正に行うため特に必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、調査期間を、その承認のあつた日後10年を超えない範囲内において延長することができる。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第十四条
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

新有効成分含有医薬品の再審査期間が8年なので、再審査期間の延長が適用されれば最長+2年ということになりますね。

では、実際に適用される場合はどのような場合でしょうか?

再審査期間が延長される例としては小児開発があります。

小児開発は使用者が少なく実臨床におけるデータが集まりにくいです。また、企業にとっては小児開発は採算が取れない可能性があるので、それだけ再審査期間は長くなっています。

しかしながら、企業が上市後すぐに小児開発を行うと仮定すると、通常の再審査期間である8年以内に小児開発が完了し、+2年の恩恵を受けられない可能性があります。そのため、この制度は小児開発のインセンティブになっていない可能性があります。

なお、実際に小児開発のために再審査期間が延長された医薬品の例としては、ネキシウムカプセル(プロトンポンプ阻害薬)、レクサプロ(SSRI)などがあります。

再審査期間の実質的な意味合い

再審査制度は、承認後にも引き続き安全性等の再確認を行うために、再審査までに一定の年数の期間を設けています。しかし、後述する再評価制度と違って基本的に承認を取り消されることはありません。

こうした背景に加えて、再審査期間中は当該有効成分に関する後発医薬品を出すことができないので、再審査期間とは実質的にデータ保護期間となっています。

再評価について

再評価制度

再評価制度とは、過去に承認された医薬品について、医薬品の範囲を指定してその品質、有効性および安全性の再評価を行うものです。

先ほどの再審査は新薬ならば一律に行われるものでしたが、再評価は先発品・後発品によらず指定された医薬品に出されます。また、再評価の意義は、当該医薬品の品質、有効性および安全性が現時点での医学・薬学等のレベルに対応したものでない場合に、実質的に承認を取り消すことです。

当該医薬品に対して再評価を受けた企業は、その品質等を証明するために新たに臨床試験(プラセボ対照比較試験)を行う必要があります。そうしない場合は市場撤退を余儀なくされるので、非常に負担が大きい制度といえます。

再評価指定の例

再評価は上記の性質上負担の大きい制度なので、近年はほとんど出されません。しかしながら、昔の承認審査体制は現在ほど厳格でなかったこともあり、古い薬には再評価を受けたものもありました。

再評価を受けた一例として、リゾチーム塩酸塩製剤(軟膏剤、貼付剤、点眼剤を除く)が挙げられます。リゾチーム塩酸塩製剤は1960年代に発売されたものですが、現在の医療環境における有効性を疑問視され、2012年に厚労省から再評価指定を受けました。その後、リゾチーム塩酸塩製剤の製造販売承認は整理され、自主回収・販売中止となりました。

希少疾病用医薬品について

希少疾病用医薬品の定義

患者数が少ないエイズ、難病等を対象とする医薬品、医療機器等は医療上の必要性が高いにもかかわらず、対象となる患者が少なく研究開発投資の回収が難しいため、なかなか開発が進みません。

このような場合に、厚生労働大臣が希少疾病用として指定した医薬品を希少疾病用医薬品オーファンドラッグ)と呼びます。また、医療機器の場合は希少疾病用医療機器(オーファンデバイス)、再生医療等製品の場合は希少疾病用医薬品等と呼びます。

日本での希少疾病用医薬品の指定要件は、患者が5万人に達せず(難病の場合は人口の1000分の1 )、医療上特にその必要性が高い(代替する適切な医薬品や治療法がない、既存の医薬品と比較して著しく有効性や安全性が高い)、医療機器または再生医療等製品とされています。

希少疾病用医薬品に指定された場合の優遇措置

希少疾病用医薬品は前述の通り開発が進まない背景があります。したがって、希少疾病用医薬品に指定されると開発促進のための様々な優遇が受けられます。具体的には、以下のようなものがあります。

  • 助成金の交付
  • 税制上の優遇措置
  • 開発の指導・助言(無料)
  • 優先審査の実施
  • 再審査期間の延長
  • 薬価における市場性加算

なお、希少疾病用医薬品の指定は指定後の状況変化によって指定要件に該当しなくなった場合、指定に関して不正な行為があった場合などに取り消されることがあります。

まとめ

今回は医薬品の承認審査における再審査、再評価、希少疾病用医薬品の指定について解説しました。

再審査と再評価は名前こそ似ていますが、中身は全くの別物であることが分かったと思います。特に、再審査は薬機法上定められた役割に加えて、医薬品のデータ保護の役目を担っていることもあるので重要なものです。

希少疾病用医薬品はひと昔前に比べると、近年はかなり開発が進んでいます。今回取り上げた開発促進に関する様々な優遇があることで、企業が開発投資した分の回収ができるようになったことが大きいと思います。

今後も薬事規制に関する記事を含めて、様々な分野の解説をしていきます。

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