医薬品開発のための薬事と規制|医薬品を取り巻く薬事規制を理解しよう①

医薬品開発の世界は薬事規制が複雑でわかりづらく感じます。
大学では詳しく勉強しなかったから、まずは基本的なことから知りたい…
たくさんある薬事制度・規制のうち、どれが大切なのだろう?

この記事の対象者
製薬業界に興味がある方、製薬企業の開発職で働きたいと思う方

「製薬業界に興味がある・医薬品の臨床開発職に興味があるけれど、臨床試験の詳しい内容や臨床開発に必要な知識が何かについてはあまりわからない…」という方はいらっしゃるのではないでしょうか?

上記の悩みは薬学部でない方はもちろんですが、薬学部の方でも意外と多いと思います。薬学部で勉強することの多くは薬剤師として必要な知識の習得で、医薬品の法規制や統計学、臨床試験の実行に必要な知識というのはあまり勉強していないことが現状です。

この記事では上記の悩みを解決するために、医薬品開発を取り巻く薬事規制の基本について解説しします。

医薬品医療機器法とは?

医薬品の開発における規制といえば、医薬品医療機器法です。この法律は略して「薬機法」と呼ばれることが多いです。薬機法は、第1条で以下のように定義されています。

この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第一条
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

長いですが、簡単にまとめると薬機法の定義は2点に集約されます。

  1. 国民を健康被害から守るために規制を行う(流通規制)
  2. 医薬品等の研究開発を促進するための措置を講じる

1つ目が特に大切です。規制を行うということは、禁止事項を設けることです。
例えば、未承認薬の製造販売は薬機法により禁止されています。
ただし、ある物質が「医薬品」として承認されると、未承認薬でなくなるので、製造販売ができるようになります。
規制の対象は、製造販売業者や医療従事者です。

基本用語の定義

「医薬品」の定義とは?

ところで、ここまで「医薬品」という言葉を何回も使ってきましたが、「医薬品」とはどのように定義されているのでしょうか?

薬機法では、第2条で医薬品を定義しています。

この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

例えば、効能効果を持たない水であっても、日本薬局方に収められていれば医薬品として扱われることになります。

また、上記から医薬品は、ざっくりと診断薬、治療薬、予防薬、に分けられることがわかります。

「製造販売」の定義とは?

製造販売の定義については、第2条の第13項に記されています。

この法律で「製造販売」とは、その製造(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を除く。以下「製造等」という。)をし、又は輸入をした医薬品(原薬たる医薬品を除く。)、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品を、それぞれ販売し、貸与し、若しくは授与し、又は医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。以下同じ。)を電気通信回線を通じて提供することをいう。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条
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ここでポイントなのが、授与(タダであげること)も製造販売に含まれるということです。

例えば、ある製薬会社がある学会に「治験外の臨床研究で使用される既承認薬」を無償で提供したとします。この場合、未承認薬を授与したことになるので、薬機法の違反に当たります。

医薬品の製造販売承認

承認基準

医薬品の製造販売をするためには、厚生労働大臣の承認を受けなければいけません。

では、承認基準はどのように定められているでしょうか?

薬機法では、「…の基準を満たしていたら承認する」という形ではなく、「…に該当するときに承認を与えない」といった形で定義されています。

例えば、申請者が製造販売業の許可を受けていない場合や、申請にかかる医薬品の効能効果に比べて安全性に著しい問題がある場合は、承認が与えられません。

承認申請資料

承認申請書に添付すべき資料

承認申請にあたって申請書に添付しなければならない資料は以下の通りです。

  1. 起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料
  2. 製造方法並びに規格及び試験方法等に関する資料
  3. 安全性に関する資料
  4. 薬理作用に関する資料
  5. 吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料
  6. 急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、催奇形性その他の毒性に関する資料
  7. 臨床試験等の試験成績に関する資料
  8. 添付文書等記載事項に関する資料

このあたりについては、申請資料(CTD)を解説する際に詳しく触れたいと思います。

優先審査について

最後に、承認申請にあたってよく耳にする優先審査について取り上げます。

優先審査は医療上特に必要性が高いと認められるものである場合に適応され、ほかの医薬品より優先して審査または調査が行われます。
医療上の必要が高いとは、致死的な疾患であったり、病気の進行が不可逆的で日常生活に著しい影響を及ぼす疾患であったりする場合を指します。

ちなみに、希少疾病用医薬品(orphan drug)は自動的に優先審査の対象となります。

ここで重要な点として、優先審査は審査が優先して行われるだけであり、申請に必要なデータが少なくてよいことを認めるものではないということです。

海外でも審査スピードを早めるような薬事制度があります(e.g. Accelerated Approval, Priority Review)。海外における迅速承認制度やそれに付随する問題については、別の記事で取り扱いたいと思います。

まとめ

日本の医薬品開発における薬事・規制は、主に医薬品医療機器法(薬機法)に記されています。

薬機法は、製造販売者や医療従事者を規制することで国民を健康被害から守ることを目的としています。

薬機法の違反は法律違反を意味するため、薬機法で定義されている基本的な用語や考え方を知ることが、薬事規制を知ることにつながります。

これから製薬会社の開発職を目指す学生は、薬事制度について詳しくなると臨床開発職や薬事職として働く際に役に立つと思います。

薬事規制は複雑ですが、この記事が今後の勉強のきっかけになれば幸いです。

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